消防用設備の中でも、私たちに一番馴染みがあるのものが消火器ではないでしょうか。
しかし、消火器の点検ってイマイチどんなことをしているのか、なぜ必要なのか分からないという方も多いと思います。
そこで、私がこれまで見聞きした経験や、自分なりに調べた結果などから、消火器の点検についてまとめてみました。
自分でも点検できるの?
実は消火器の点検は、資格を持っていなくてもできる場合があります。
まず、以下リンク先の表に記載があるような「防火対象物」に含まれない、一戸建てなどは、消防署への報告の必要はなく、自分で点検可能です。
それに加えて、消火器の点検が必要となる防火対象物であっても、以下の項目に当てはまらない場合は、消防設備士や消防設備点検資格者のような資格は必要ありません
資格が必要な消火器点検基準
- 報告期間が1年の防火対象物(特定防火対象物)のうち、延床面積が1,000㎡以上である
- 報告期間が3年の防火対象物(非特定防火対象物)のうち、延床面積が1,000㎡以上であり、消防長署が火災予防上必要があると認めて指定するもの
- 特定防火対象物のうち、屋内階段が一つしかなく、3階以上に飲食店等不特定多数の者が出入りする用途の物件がある
- 上記いずれにも当てはまらないが、消火器製造年から加圧式で3年、蓄圧式で5年以上経過している ※
※加圧式、蓄圧式については後ほど解説します。
製造年については、以下写真のように消火器に記載があるかと思いますので、確認してみてください。
もし上記条件に当てはまった場合は、必ず有資格者による点検が必要になります。
当てはまるのかどうか分からないという場合は、自己判断するのではなく、必ず消防署に確認しましょう。
加圧式と蓄圧式
先ほど出てきた、加圧式と蓄圧式について解説します。
それぞれの見分け方は、消火器の上の部分に丸い圧力ゲージ「指示圧力計」がついているかどうかです。
ついているもの(右)が蓄圧式です。
加圧式はレバーを握った際のみ内部に圧力がかかるため、本体が劣化している場合、急激に圧力がかかることで破裂してしまう恐れがあります。
それに比べ、蓄圧式は、常に圧力がかかった状態であり、劣化で圧力が抜けることはあっても破裂する可能性が低い構造となっています。
そのため、より安全性が高く使用しやすい蓄圧式が現在主流となっており、加圧式は生産終了へ進む流れとなっているようです。
お持ちの消火器を確認し、もし加圧式の場合は、できるだけ早く蓄圧式の消火器に交換することをお勧めします。
また消火器には、中の薬剤や大きさも色々な種類があります。
種類については以下コラムの消火器の部分でも紹介しています。
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点検内容は?
加圧式で3年以内、蓄圧式で5年以内の場合、消火器の外観から判断する「外観点検」をします。
それ以上の場合は、有資格者による「機能点検」が必要となっているため、自己点検はできないということになります。
外観点検
主に以下のようなポイントを確認します。
- 容器に変形やサビ、消火薬剤の漏れがないか
- 「封」と書いてあるシールは破れたり剥がれたりしていないか
- 黄色い安全栓は抜けたりしていないか
- レバーが変形・損傷していないか
- キャップ部分はしっかり閉まっているか
- ホースにヒビや劣化がないか
- (蓄圧式のみ)指示圧力計の圧力値が緑色の範囲内か
- 必要時すぐ持ち出せる場所に設置しているか
- 消火器ごとの歩行距離20m以下になるよう設置されているか
- 消火器の標識が破損などなく設置されているか etc...
結構ありますよね…
消火器を自己点検する時に使える「消火器点検アプリ」が消防庁から発表されているようなので、こちらを使用するのもオススメです。
機能点検
有資格者による機能点検とは、実際に消火器の蓋を開けて、内部を確認するという点検です。
ただし、蓄圧式は特に、この機能点検をする方が、新品の消火器を買うよりも高くなるという矛盾が生じます。
どういうことかというと、蓄圧式消火器は内部に常に圧力がかかっています。
そのため、圧力を抜いてから蓋を開けなければならないのですが、どうしても完全には抜けきらず、蓋を開けるときに薬剤が飛び出してしまうようです。
その薬剤が出てしまった分を補充するため、量りなどで重さを確認して戻すという作業も必要になります。
このような一連の作業を現場で行うのは難しく、一旦点検業者さんが持ち帰り、機能点検をしてからもう一度戻しに来るということになります。
つまり、機能試験を実施する場合、薬剤の詰め替え費や、一旦持ち帰ってもう一度来てもらう分の出張費などが発生します。
機能点検にかかる費用を総合すると、消火器を新たに購入するよりも高くなってしまうため、消火器は蓄圧式で5年経過したら交換するのが良いと思います。
※もし機能点検を実施する場合でも、消火器の使用期限は10年となっているため、10年経過している消火器は加圧・蓄圧に限らず交換しましょう。
点検をした後どうする?
一戸建て以外の防火対象物の場合、1年ごともしくは3年ごとに、消防署に点検結果を報告しなければなりません。
特定防火対象物は1年、非特定防火対象物は3年です。
自分で点検する場合は、先ほど紹介したアプリで報告書の作成ができます。
他にも、以下リンク先よりWordファイルをダウンロードして使用することも可能です。
消防庁が発表している、以下の点検方法パンフレットを参考にするとわかりやすいです。
消防点検業者さんに点検を依頼する場合は、このような点検報告書を作成してくれるか、またそれを消防署に提出してくれるか等も確認しましょう。
消火器を廃棄したい場合どうすれば良い?
最後に、消火器の廃棄についてですが、消火器はリサイクルを前提として作られているため、専門の回収業者に出さなければなりません。
以下リンク先から、消火器の回収窓口が検索できるので、利用してみてください。
回収窓口によって、費用や回収方法も異なると思いますので、事前に問い合わせをしましょう。
まとめ
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消火器には加圧式と蓄圧式があり、蓄圧式の方がより安全な作りとなっている
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点検には外観点検と機能点検があり、機能点検は有資格者でなければ実施できない
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機能点検の実施は新しい消火器の購入よりも費用がかかる可能性があるので、機能点検が必要なタイミングで消火器を新規購入するのが良い
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消火器の廃棄は、専用の回収窓口にて回収してもらう必要がある